書籍紹介
「スモールビジネスの教科書」
著者:武田所長
レビュー
スモールビジネスの世界があるということを初めて知るキッカケとなり、キャリアの1選択肢になると思った。本書はスモールビジネスを解説し、知るきっかけとなる参考になる本である。スモールビジネスが人生の様々な生き方のパスポート(自由に使えるお金の獲得、柔軟な仕事時間、次のビジネスへの土台など)になるという考えは魅力的であった。今回はスモールビジネスの戦略までだが、続きはぜひ本書を読み、自分のキャリアを考えるキッカケにして欲しい。
図解・概要
スモールビジネスとは
スモールビジネスの特徴を以下に示す。急成長とイノベーションを求められるベンチャー企業と対比することにより、特徴がわかりやすい。
スモールビジネスの特徴としては事業価値の最大最速成長より安定着実性を重視し、自己資本での運営を基本とする。また、自由な働き方を重視し、オーナーの生き方を制約しない。大きくリスクやレバレッジを取らない分、売上は3000万円〜100億円を想定している。
スモールビジネスで得られること
スモールビジネスの成功は様々な行き方へのパスポートとなる。自由な人生を獲得する。
- 自由に使えるお金を持てる。
- 仕事時間を柔軟に調整できる。
- ビジネス起点で多くの出会いがあり、自分が面白いと思う仕事を追求できる。
- スモールビジネスの成功や得た資金でベンチャービジネスに乗り出す。
鉄板のスモールビジネス
- デジタルメディア
- 広告運用
- 人材派遣
- コンサルティング
- システム開発
- 教室
- 営業代行
- フリーランスマッチング
- 不動産運用
【スモールビジネスの基本条件】
- 課題自体に多くの人が気付きづらい
- 自分の趣味、経験があるからこそできること
- 属人性がある
- 称賛されない
- 既に類似サービスに金を払っている市場が存在
【基本条件1.について】
仕事を通じて「少数の人しか持っていないと思われる強いニーズ」を発見したら、宝になる可能性がある。普段日常的に目がつくビジネスは避けた方が良い。小売店や飲食店のように多くの人の目に触れるような気付かれやすい課題は必然的に参入者が過剰となる。
【基本条件2&3について】
スモールビジネスは自分の能力であり、一般人よりは自分がうまくできそうな内容に絞り込む。その個人の能力による属人性が強いビジネスはスケールしづらく、大企業やベンチャーは参入しづらい。1人で十分に売上を立てることができれば、属人性を低下させる投資を行い、自分の業務量を徐々に減らし、自由な時間を得ることが可能。
【基本条件4について】
称賛されるビジネスは市場機会に過剰な参入を招く。人が一見やりたくなさそうなことをする。それが自分がやりたいことであれば強い。ビジネスは本来、不確実で、泥臭く、地味なもの。それに徹することができるか。
【基本条件5について】
既にお金が払われており、サービス提供も儲かっている状態の市場に参入し、そのお金を少しかすめ取る方法を考えて実行する。
スモールビジネスの戦略
スモールビジネスの戦略として①〜④のステップを踏む。既に成功しているビジネスに自分が対象とする顧客セグメントニーズを反映させ、マイナーチェンジすれば良いというのが基本。
① 自分の経験を振り返り探査領域を定める
仕事、趣味を通じた領域を考える。自分の能力、ネットワーク、専門性を考慮し、事業領域(ビジネスモデル×コンテンツ)を決める。スモールビジネスに向いているビジネスモデルは限られているから、自分の経験からコンテンツを決める。
② 探査領域において儲かっている企業を発見し、儲かる手法を探す
営業利益を指標とし、儲かっている会社が容易に多数発見できる領域を最低基準とする。注意点として、参入企業に対して儲かっている割合が少ない領域は危険である。同じ領域で儲かっている企業と儲かっていない企業は存在し、その成功要因は分析し、コピーする。
③ 対象顧客セグメントを明確にし、バーニングニーズを発見する
成功例をマイナーチェンジさせる考えに徹する。市場が成熟し、顧客が十分に認識している課題でスモールビジネスを始める。
顧客の行動を調べ、顧客の欲望を起点にビジネスを考える。自分が達成できるかもしれないという誘惑を売る。本書では「燃えるような欲望=バーニングニーズ」を売るとされている。
持っている人は少人数であるが、必ず存在するバーニングニーズに着目する。大企業が優先度を下げ、相手にされなかった少数の集団が強い欲求を持っている。
【課題の検討】
深刻な顧客の課題に対して1つ1つ丁寧に向き合うことを基本とする。課題を知る方法として、既に解決に向けてお金が払われている課題を見つける。その課題について購買活動を含めて顧客のことを調査する。サービスをどのような観点で比較し、購買するか。課題は既に存在し、顧客自身も課題解決を行なっている。しかし、そこには供給が足りていないため、利益を得る余地がある。
成功している大企業は儲かっている顧客セグメントをに注力し、優先度を下げている顧客セグメントがある。そこを狙う。
【バーニングニーズの把握方法】
(1)売れているサービスの着火点を探る
環境は変わっても人間自体は変わらないから過去に流行したサービスやシステムの原点を辿れば人間が持っている強い欲求に常に根ざしていることがわかる。より身近で小規模だが、強いニーズが良い。
例として、経理担当者のみ、上場企業の経営計画作成者のみが持っている解決したい強い欲求がある。
(2)対象セグメントに憑依する
商品を買うということは極めて心理的な現象として捉える、顧客の感情理解、憑依は商売には欠かせない。セグメントがしている生活と自分を可能な限り近づけ、どうしても一致させることができない部分は想像で補い、その上で一体となる。購入している製品、取り巻く環境を可能な限り把握する。
【顧客セグメント】
スモールビジネスの競合優位は自分の経験と能力を含めるが、それを自分の経験と能力が活用できるセグメントを選ぶ。特定のコンテンツ、特定の顧客セグメントに特化し、拡張性がないことは他の領域との壁となり、簡単に参入されないことを意味する。
④ 成功している企業の「儲かる手法」を改変し、マイナーチェンジコピーを創出
大手やベンチャーが取れない戦略を積極的に取り、大手が捨てた市場の一部を頂く。
【マイナーチェンジ作製の定番パターン】
(1)対象セグメントを絞りサービスの競争力を局所に高める
例として、スタートアップに特化した人材紹介ビジネスが挙げられていた。
(2)提供サービス・機能を絞り価格を下げる
大企業は競合と差別化するために追加した不要な機能がついた製品は多い。それらの機能を外し、顧客の要望を満たす最小限かつ安価な製品を投入する。
(3)サプライヤーを変更し価格を下げる
小規模、新規であるなどの理由で大手や他社が使わない低価格のサプライヤーを活用する。ただし、見極めが大切。また、人材の採用も社内教育の活用や今まで正社員の仕事と考えられてきた仕事を副業人材で行うことで、コスパ良く行う。
(4)マーケティング軽視業界でマーケティングを最適化
マイナー製品ではチャネル別のマーケティングが最適化されておらず、マーケティングのみで勝てるビジネスもある。
(5)まとめ
供給が足りていないため、普通に求められるものを安定・安価に普通に提供する。差別化は必要なく、「他社でもできるだろうが、あなたの選択肢の中で悪くない」と思われるような提供意識でマイナーチェンジを作り、提供する。
スモールビジネスは真の課題を見つける、ゼロベースで考えることは不要。既に流れているお金を自分に引き寄せる。顧客は「自分が理解できる普通に良いもの」が欲しい。
スモールビジネスに求められる人の特徴
- 「信頼を大切にする」 技術などで決定的な差別化手段がないスモールビジネスは人のつながりが最も重要な差別化手段となる
- 「自律性」 自らがタスクを考え、こなしていく
- 「好奇心・学習意欲」
- 「リスク選好性がある程度ある」大きなリスクは取らないが、安定したスモールビジネスは細かい投資を繰り返す。数十万円程度の投資。
心に残った本書の言葉
ビジネスは本来、大上段に振りかぶったテーマより、一杯のうどんをお客さんに出す、それを美味しいと感じて喜ぶ、その喜びが伝播するところに本質がある。ビジネスは、まず目の前の1人を喜ばすスモールなところに全ての始まりがある。
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