参考書籍・文献
・「治験薬GMPハンドブック」 著者:古田土 真一
・「治験薬GMPについて(日薬理誌) 」 著者:榊原 敏弘
始めに
コロナワクチンで多くの人が注射をし、新しい薬は大丈夫?と思われる方もいると思われる。なかなか一般の方には馴染みがないと思われるが、薬には色々な規則があり、その一つに薬の開発段階で守らなければならない規則である治験薬GMPがある。なぜ守るのか、その理由は患者さんを守る為である。
目次
・重要点
・薬と治験薬
・薬の開発の流れ
・治験薬GMP
・薬の大事な3つの観点
・治験薬GMPの考え方
・コメント
重要点
【治験薬GMPの目的】
患者さんの保護、申請データの取得
【治験薬の特徴】
開発段階である為、変動がある。一貫性と同等性が求められる。
【新薬の研究開発】
先行投資、高いリスク
薬と治験薬
基本的に薬は人間にとって異物であり、用途によっては患者さんに喜ばれる有効性を示すこともあれば、安全性を脅かす毒にもなる。薬の開発段階においてヒトの有効性と安全性を確認する試験のことを治験と言い、その薬のことを治験薬という。つまり、治験薬とは試作段階の薬である。治験の結果をもって、国から承認を受け、晴れて医薬品として商品となる。
薬の開発の流れ
研究により有望な薬の候補が見つかった後は、開発の流れはざっくりと言うと以下通りである。
【非臨床試験】動物等を使用して安全性を確認
↓
【臨床試験】ヒトで有効性を確認する薬の臨床試験のことを治験
という
↓
【上市】国の許可を得て、医薬品として市場に出荷
研究から上市まで約10〜15年かかる。
治験薬GMP
GMPはGood Manufactuaring Practiceの略で、単的に言うと患者さんを守る為に医薬品を製造する時に必ず守るべき規則となる。つまり、治験薬GMPは開発中の薬を製造する時に必ず守るべき規則ということになる。違反すれば罰則がある。
薬の大事な3つの観点
薬には有効性、安全性、品質の重要な3つの観点で成り立っている。薬は他の製品と比べて、不良品の見分けがつかず、それを患者さんに投与するというリスクがある。例えば、電化製品の不良品であれば、外観で壊れている、作動しない等わかりやすい。しかし、薬の見た目はただの液体や白い粉であり、不良品が不透明である。
薬の品質とはは有効性、安全性を担保するものである。有効成分等がバラつきなく一定量あるか、違う成分や身体に悪い成分等が入っていないかを表すものである。不透明な薬に対して、品質検査を行わなければならない。
治験薬GMPの考え方
このようにヒトに投与する時には患者さん保護の為、治験薬をきっちり製造し、検査を行い、品質を確認し、投与しなければならない。しかし、治験段階では、製造方法が確立されていない。治験初期の段階では少数のヒトに投与すれば良い為、極端な話、コップの量程度で治験薬を作れば良い。治験初期の段階に合格すると、大規模な治験後期段階に進み、多くのヒトに投与する必要がある。治験が進むにつれ、製造量が増え、大きなタンクで作るような製造方法に変わり、品質もブレる可能性がある。
安定的に高品質の薬の供給を目指し、市場に製品として出す薬のGMPとは性質が異なる。治験薬GMPは製造方法に変化がある。しかし、患者保護という原則は変わらないが、開発段階における治験薬は一貫性、製造方法と試験方法が確立してした開発後期には販売される医薬品と同等性が求められる。一貫性は原料、剤形、設備、製造方法、検査の変更があり、そのリスク評価を行い、変更に問題ないことを確認しなければならない。このような変更が伴う治験薬において、品質を一定にしなければ、有効性と安全性のデータにブレが生じる為、国に申請する治験のデータの観点においても品質は重要である。
治験薬GMPは患者さんの保護、安定した申請データ取得の観点から守らなければならない規則である。
コメント
薬の開発は失敗するリスクがあり(ヒトに対して有効性がない、安全性がない)、莫大なお金も必要とする先行投資を行う側面がある。ハイリスクであり、一部の人からは薬の事業は「ばくち」「ギャンブル」だという人もいる。
規制も治験薬GMPだけではなく、その大枠の臨床試験の規則であるGCP、医薬品の製造に関わる規則であるGMP、臨床試験前に行う動物等を用いた非臨床試験の規則であるGLP、製造販売業者が医薬品を出荷する時、出荷した後に守る規則であるGQP等「G( )P」という規則はたくさんあり、患者さんは保護され、薬の効果を保証する制度は確立されている。
ハイリスクな事業な上に、規則のハードルもあり、達成するには知恵の集結と多くの人・物・金・時間等のリソースが必要である。それでもリスクを背負って、先行投資行う理由はただ一つ患者さんに喜んでもらうためである。
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